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「えーっと、鏡全体を覆うように黒い布を被せるんだよね……」
美弥は手帳を熟読し、儀式の用意に取り掛かった。
普段は電化製品の説明書を読まずに捨てている美弥も、今回ばかりは手順を逐一確認する。
そのせいもあって、準備に取りかかったのは六時五分前だった。
美弥は鏡にカーテンを被せ、洗濯ばさみで留めた。
悪魔が出て来やすいように一応寝室の全身鏡を使ってはいるが、本当に悪魔が来ることを信じているわけではない。
美弥にとっては、あくまで話のネタくらいの感覚だった。
「さて、後は六時になったらこれを切り裂くだけ……」
美弥はカーテンに目を向け、急に不安になった。
「え。これ、切れる?」
鏡に掛かっているのは分厚い遮光カーテンだ。
一方、用意していた刃物はちゃちなカッターナイフしかない。
「包丁とか、持ってきた方が良かったのかな……」
試しに布地にカッターの刃を当ててみたところ、刃は何の抵抗もなく突き刺さった。

