「藤原先生のおかげで助かりましたよ」
8時間の手術が終了して、
奏輔をハートセンターに届けた後。
梶木が、麻酔科の医局長である
東郷にそう言っているのを、
雅俊は廊下の曲がり角の手前で耳にした。
「うちの担当医が見落としていた
かもしれないことを…
ありがとうございました」
「いえいえ、無事終わってよかったです」
東郷の愛想笑いが目に浮かぶ。
このタイミングで出て行くのも面倒な気がして、
雅俊はその場を後にしようとした。
その時、
「うちの伊東が、
藤原先生を気に入っている理由が、
今回よくわかりましたよ」
聞こえたすみれの名に、
思わず動きが止まった。



