女はゆっくりと立ち上がった。
背はそこまで小さくはないが、
佇まいが子供のそれだった。
雅俊は背中越しにドアを開けた。
帰ってくれ、の意を込めて。
女はゆっくりと歩を進めて、
ドアを出たところで振り返った。
「そういえば、君は、誰?」
どこか懐かしいような
よく知っているような香りが漂う。
雅俊は余計なことを考える前に
もう一度女を見下ろして言った。
「誰でもない」
それから黙ってドアを閉めた。
コツコツと足音が遠のき、
やがてドアが閉まる音が聞こえた。
今度こそ家に帰れたことを確認して、
雅俊は片付けに取り掛かった。
「ぁ…」
廊下に置きっぱなしにしていた
段ボールを回収して…。



