パーフェクト・フィグ



器械のセッティングを終えて、
梶木教授が「タイムアウト」と言う。

全員の手が止まるも、
すみれの痰混じりの咳は止まらなかった。


「梶木です」

「い、とう…ゴホッ…です」

「高橋です」

「麻酔科、松島です」

「藤原です」

「東郷です」

「器械出し、島袋です」

「外回り、細谷です。
 患者さん紹介お願いします」


亀井奏輔くん、10歳、男児。
先天性僧房弁閉鎖不全症に対し、
人工心肺下において、僧帽弁置換術施行。
手術予定時間、8時間。
出血は500㏄程度で、セルセーバー使用。


「以上です。お願いします」

「お願いします」


全員が答えると、
梶木がメスを入れて、手術が開始した。


「鑷子、ガーゼ」


そう看護師に言うすみれの声は
もはや通常の半分も出ていなかった。