雅俊は気にせず続けた。
「慣れていても、怖いものは怖いだろ。
脈も速かったし、末梢も冷たい」
雅俊が奏輔の指先から手を離すと、
近くにいた看護師も確認するように
奏輔に触れた。
緊張している証拠が
いくつも体に現れている。
それでも冷静を装い、
他人の心配までして見せた。
そんな奏輔の男らしいところに、
雅俊は感心した。
「なるほど。たしかに」
松島が頷いた。
黙って聞いていたすみれは、
何度か咳をしてからようやく口を開いた。
「ああ見えて泣き虫だから、奏輔は」
「へぇ~可愛いですね!」
松島が言うと、
すみれがマスクの中で
小さく微笑んでいるのが、
雅俊にはわかった。
「さ、ちゃちゃっと終わらせてあげるかな」
首にかけていたルーペを装着しながら、
すみれは手洗い場へ出て行った。
ドアが閉まり切るその瞬間、
苦しそうな咳が数回、
雅俊の耳に届いていた。



