奏輔の呼吸が止まったところで、
松島がマスク喚起を開始した。
そして手術室内は一気に騒々しく、
慌ただしい雰囲気で
手術に向けての準備が始まった。
子どもはちょっとした音でも敏感に反応し、
怖がることが多い。
そのため、眠るまでは物音を立てない
という暗黙のルールがある。
すみれはマスク喚起される
奏輔をしばらく見つめていた。
雅俊は点滴からいくつか薬を入れながら言った。
「しっかりしてるな、お前のことまで心配して」
手を動かしつつそう言うと、
すみれはお守りをポケットに入れた。
そして着ていた白衣を脱ぎつつ言った。
「本当は怖いくせに。
かっこつけたがりなお年頃だから」
松島が挿管しつつ言った。
「でも、慣れてる感じでしたよね。
10歳にしては落ち着いてるし。
やっぱり何回もオペしてるからですかね」
「どうかな」
すみれが何かを言いかけるのと、
雅俊の言葉が重なった。



