すみれが手術台の脇に立つと、
奏輔が目線をすみれに向けて、
手に持っていたお守りを差し出した。
「これ、あげる」
「私に?」
すみれが小さく咳をしてから言うと、
「うん」
と奏輔がお守りを高く突き上げた。
「先生、風邪なんでしょ?
これ持ってたら、良くなるよ」
今から大手術をしようとしている子どもが、
大人の体調を気遣っている。
そんな姿に、雅俊をはじめ、
その場にいたスタッフ全員が
胸を打たれた瞬間だった。
すみれは奏輔からお守りを受け取って言った。
「これがあったら、手術も絶対成功する」
互いに表情こそ真剣だったが、
すみれと奏輔の確かな信頼関係がそこにはあった。
「痛くないようにしてね」
「うん、わかってる」
頷き合ってから、
すみれが雅俊の目を見て頷いた。
それが、麻酔を開始する合図と読んだ雅俊は、
手に持っていたシリンジを点滴ラインに繋げる。
そして、徐々に薬を押し入れた。
「それじゃあ、奏輔君、眠くなるよ」
「大きく息してね。
そう、上手だよー」
と松島が言う。
さすが、何度も手術経験があるだけある。
奏輔はゆっくりと深呼吸を繰り返し、静かに眠っていった。



