パーフェクト・フィグ





東都南大学病院の中央棟は
天井まで吹き抜けの構造になっている。

日中は患者やスタッフが入り乱れる
エントランスホール。

回転扉の上の大きな窓ガラスから
薄暗いホールを煌々と月が照らしていた。

そこにあるソファに腰かけ、
すみれはただ茫然と
窓の向こうの月を見上げていた。


コツ、コツ…と
小さな足音が近づいてくる。

やがて近づいた人物が、
ドサッとすみれの横に上着を置いた。

すみれが手術室で脱いで、
その場に置いてきたものだった。

夏の終わりにしては早すぎる
随分と分厚い生地のジャンパーだ。


「松島から、全部聞いた」


聞き覚えのある、低い声。

すみれは何も答えず、
自分の上着を膝の上にかけた。

その空いたスペースに、
雅俊が静かに腰かけた。