「この子はまだ生きられる。 オペをすれば絶対に助かる。 でもしなかったら死んでしまう」 すみれが副盤台の上のトレーに メスを投げ入れた。 カシャンッと金属音が いつもより大きく響く。 「それも伝えた」 「だったらどうして!」 「頑なに聞かなかったんだ」 取り乱しつつあるすみれを 梶木が窘めるように言った。 「同意書にサインはない」 手術の同意書に親のサインがなければ、 心美を救うことはできない。 「…」 すみれは手術台から離れると、 ガウンなど身に着けていたものを すべて外し始めた。