ハートセンターを出るところで、
「伊東先生!」
と、看護師が声を上げた。
報告してきた新人看護師が、
申し訳なさそうに言った。
「あの、すみませんでした!
私が、もっと、早くに、
心美ちゃんの容態に気づいていれば…」
段々と声が小さくなるが、
すみれは足を止めずに言った。
「大丈夫。この状態は手術したら助かる」
「あ、はい…」
「急ぐから、道、あけて」
「あ、すみません!」
新人看護師が退いたところで、
すみれたちはエレベーターに乗った。
看護師が見つめる中、ドアが閉まる。
ドアが閉まった瞬間、
後輩が呆れたように言った。
「急いでるって、見てわからないんですかね?
ただ自己満で謝りたいだけだろ」
「…」
すみれはいちいち気に留めなかった。
心美が頑張って手術に耐えられれば、
絶対に助けられる。
その自信があったからこそ、
いたって冷静だった。



