「食後のお紅茶でございます。
って、言わないの?」
雅俊は何も答えず
マグカップに注いだ紅茶を二つ
テーブルに置いた。
すみれが両手で持ったカップに
そっと口をつける。
「…熱いぞ」
「あちっ」
眉間に皺を寄せて、唇を抑える。
そんなすみれの姿に
雅俊の口角が微妙に動いた。
「フッ、子どもか」
今度は唇を尖らせて
一生懸命に息を吹きかけている。
そんな姿を時折見ながら、
雅俊は黙って紅茶をすすった。
深夜1時。
不思議な時は流れていた。
明日も仕事だというのに、
まったくタフな女だ…
そう思っていると、
すみれが目を擦り始めた。
さすがに眠いのだろう、と
安易に予想がついたのも束の間、
静かなこの空間に
スマホのバイブ音が響いた。



