パーフェクト・フィグ




雅俊はテーブルにあったティッシュを
一枚とってすみれに差し出した。

が、すみれは「おいし…」と呟きつつ
夢中でカレーを口に運んでいる。

気づかれることのなかったティッシュは
そのまま皿の横に置かれた。


普段、人が食事をしていることなんて
正直に言ってしまえば、どうでもいい。

それなのに、不思議だった。

必死にヒマワリの種を頬張る
ハムスターを見ているような、
そんなくすぐったい感覚が
雅俊の胸に走る。

ペットに餌をやる飼い主の気持ちが、
心なしかわかった気がした。


「はぁー、美味しかったっ」


ようやくすみれが顔を上げると、
雅俊はずっとその姿を見ていたことに
気づいて我に返った。


「ごちそうさまでございました」


手を合わせるすみれに
雅俊は何も言わずに皿を下げた。

横にあったティッシュで
すみれが口を拭くのを確認してから、
雅俊はポットでお湯を沸かした。


「コーヒーか、紅茶は?」


綺麗になった皿に、
また不思議な感覚が胸をくすぐる。


「君と同じの」


クールな声がそう答える。


「俺はいい」

「…」


顔を上げると、
カウンター越しに
じっと見てくる大きな瞳と
視線がぶつかる。


「…紅茶、淹れる」


すみれは表情を変えることなく答えた。


「やったね」