すみれが雅俊の横を通り過ぎたところで、
雅俊はすみれから香る匂いに気づいた。
「消毒…」
「ん?」
モノトーンで揃えた部屋の
ダイニングテーブルに腰かけたすみれが、
完全にお客さんスタイルで"待ち"を
しながら雅俊を見上げた。
「いや、なんでもない」
「消毒?くさい?」
すみれが自分の肘辺りに鼻を寄せる。
雅俊は答えることなくキッチンに入った。
「カレー…温める」
「頼むぜよ」
まだ出会って数日だが、
この独特な雰囲気には慣れてきた。
こういう謎の生き物には
いちいち触れないのが一番だ。
雅俊は黙ってIHの電源を入れた。



