パーフェクト・フィグ




子どもをハートセンターに返し、
看護師へサクッと指示を出して
カルテにパパッと記録を書いてから、
すみれはダッシュで着替えて家に帰った。

ソレイユのエントランスを越えて
807号室のインターホンを鳴らす。

走ってきた勢いで
ただでさえ量の多い髪が
更にボリューミーになっていたが
そんなことは気にしない。

静かにドアが開くと、
全身黒の部屋着姿の
雅俊が出迎えた。


「さすがに0時を過ぎたら来ないと思ったが」


第一声がそれだったが、
部屋の奥から漂うスパイシーな香りに
すみれはキラキラと目を輝かせた。


「日付を越えたらゼロカロリーだから
 気にすんな」


ポンッと雅俊の肩に手を置いて、
足早に部屋に上がった。


雅俊が「意味がわからない」と
眉間に皺を寄せたことなど、
すみれが気にするはずもなかった。