パーフェクト・フィグ




その日の夜。

緩和ケア部門への挨拶を済ませ、
買い物をして帰宅すると
時刻は21時を回っていた。

雅俊は、手術以外の日は
緩和ケア部門で、余命の短い
終末期患者への疼痛コントロールを
することになっている。

どんな患者がいるのか見に行っていると
気づいたら今日が終わっていた。

雅俊は買い溜めたスーパー袋を抱えて
ソレイユのエントランスを過ぎた。

一人暮らしが長いため、
こうして夜のスーパーに
行くことも慣れたものだ。

エレベーターに乗ったところで
ポケットに入れていたスマホが震えた。

麻酔科のグループメッセージで
やり取りが行われている。


『これから小児心臓きます。
 来れる先輩いらっしゃいますか?』


下っ端からのメッセージだった。

小児心臓につける麻酔科医は少ない。

下の人間が1人で当直をしている際に
緊急手術が入れば、
こうしてベテラン医を呼ぶのが
今の麻酔科では暗黙の了解なのだろう。

雅俊が文字を打つタイミングで
東郷からの返信が出た。


『トイレしたら行きます』


便座に座る熊のスタンプが一つ。

雅俊は黙ってスマホをしまった。