ハートセンターを出たところで、
松島がマスク越しでもわかる
笑みを浮かべて言った。
「藤原せんせ~?
実は知り合いだったんですね?
すみれ先生と。
言わないんだもんな~」
雅俊はエレベーターのボタンを押して
ただドアが開くのを待った。
「知り合いじゃない」
「え、だって向こうが
『君のこと知ってる』って…」
「数日前に一度会っただけだ」
「え、なんで?どこでですか?」
「…きたぞ」
エレベーターの明かりが点滅し、
ドアが開いた。
「そこ隠す必要あります?」
松島がボタンを押して言った。
「いやらしいんだから~」
「…」
雅俊は松島をじろりと睨んだ。
「なに言ってんだ」
「すいやせん」
ぼそっと謝罪しつつも、
松島は横目に雅俊を伺っていた。
雅俊は気にせず
持っていた資料を松島に渡した。
「これ、東郷先生に返しておいてくれ」
「はーい」



