梶木が手を進めつつ言った。
「心臓抑えてます」
それが麻酔科医に言っていることだと、
オペを経験していれば理解に容易い。
雅俊が「はい」と返事をすると、
すみれが顔をこちらに向けた。
普通は皆、顔を下げて
ルーペの奥から直接見る。
だがすみれは、ルーペ越しに
大きくなったその目で雅俊を見ていた。
「…」
だが、何も言わずにまた術野に目を向ける。
雅俊も何事もなくモニターに視線を戻した。
すると後ろから松島が
雅俊の耳に顔を寄せた。
「さすがですね、藤原先生。
あのすみれ先生が見惚れるほどとは」
見惚れるの意味を知らないのかこいつは…
雅俊は松島をじっと睨んでから、
シリンジポンプの設定を変えるのに
しゃがみ込んだ。



