雅俊は深いため息をついてから、
横目にすみれを見た。
「…お前が行きつけの食堂、
今日はハンバーグらしいぞ」
すみれは一瞬目を丸くした。
「ハンバーグ…」
松島が2人の顔を交互に見る。
「え、え?なんの話ですか?」
雅俊は松島には見向きもせず言った。
「ハンバーグ…定食だ」
「…ほぉ~」
すみれはポケットから手を出すと、
飛行機ごっこをする子どものように手を広げて、
そのままどこかへ飛んで行った。
その背中を見届けて、
雅俊は思わずホッと息を吐く。
それからすみれの後を追って歩き出した。
ただ一人、松島だけが、
訳が分からないという顔で取り残されたことは、
他の誰も知り得ないことだった。



