歩く気力なんて、とうになかった。
あの場で無理矢理開胸するほど、
自分だって馬鹿じゃない。
でも、もっとできたんじゃないか。
やれたんじゃないか。
私がいれば…
「…んぁーっ、もう!」
すみれは搔き上げた髪を掴んで、
思わずその場でしゃがみこんだ。
それから、気合を込めて立ち上がる。
だがすぐに、その足も折れそうだった。
「あんなに寝たはずなのに…」
朝はあんなに気分が良かったのに。
これまで幾度となく見てきたあの瞬間は、
あの襲い掛かる不安も、
言葉にできない冷たさも、
いつまでたっても慣れるものではなかった。
ただ茫然と歩いていて、
ふと足を止めた。
気づけば、中央棟を離れた別館、
緩和ケア部門の前に来ていた。



