下まですみれを運ぶと、
病院の入り口に並んでいる車いすが目に入った。
雅俊は「借りるぞ」と
一言警備員に告げて、
すみれを車いすに乗せた。
それから職員用入り口を出ると、
スクラブ姿だったすみれが震えあがった。
「さ、寒い…」
東都南大学病院は海沿いの高台にあるため、
常に海風が吹き付けている。
今の雅俊には寧ろ涼しいぐらいだったが、
すみれは寒さで目を覚ましていた。
雅俊はスクラブの上に羽織っていた
黒い上着をすみれにかけた。
「すぐ着くからこれで我慢しろ」
「うぅ…」
不服そうにしながらも、すみれは上着に顔を埋めた。
「いい匂いだ…」
「寝てろ」



