薬と酸素の指示を看護師に出して、
雅俊はカーテンを開けた。
中央のスタッフステーションを見渡して、
小さなその影を探す。
まさか、もう倒れてるんじゃないだろうな…
万一に備えて、雅俊は看護師用のカートから
針とアルコール綿を手に取った。
すると、職員用の洗面台から
ガシャンッと大きな物音が聞こえた。
誰もが音の方を振り返る頃には、
雅俊は倒れたすみれを抱え上げていた。
「おい、しっかりしろ!」
膝の上にすみれを起こすと、
長いまつ毛が揺れ、
薄っすらと茶色い目が開いた。
「…君に、頼みがある」
高橋や看護師がモニター類を持って寄ってきた。
雅俊はすみれの腕で脈を確認した。
「血圧は問題ない」
モニターを付けようとする看護師を振り払って、
すみれを見下ろした。
「なんだ、頼みって」
「…家まで、歩けそうにない」
細い腕が雅俊の首に伸ばされる。
雅俊は驚きつつ、そばにいたスタッフを見た。
不思議そうに2人の会話に
聞き耳を立てているのがわかる。
雅俊は「ったく…」とため息をつきつつ、
僅かに右口角を上げた。



