学園最強の兄は妹を溺愛する

「なあ、おい。アイツ、見たことねえか?」

「あっちにいるヤツらも。チッ、今まで気付かなかったぜ」


『待って! みなさん、落ち着いてください。手は出さないで』


「は? なに言ってんだ。やられる前にやれ。ケンカの鉄則だろ」


『今日は、わたしたちの体育祭ですよね? わたしたちみんなのお祭りです。ケンカをする日じゃありません。この学園に悪さをするつもりで入ってきているみなさんにも、わたしの声、届いていますよね? お願いします。どうかこの学園から、なにもせず出ていってください。今すぐ、このまま出ていってください。お願いします』


「——陽介」


 テントのうしろで声がして、パッと振り向くと、蒼真さんが膝に手を当て、荒い呼吸で立っていた。


「あっちは、なんとか片付いた」

「ああ。わかった」

 蒼真さんの言葉を聞いて、お兄様が大きくうなずく。


『裏の連中は退散した。今ならなにもしないでやるから、この学園に関係のない連中は、さっさと出ていけ。今すぐだ』


 お兄様の有無を言わせぬ冷たい声が、グラウンドに響く。


 チッと舌打ちしながらも、学園に入り込んでいた人たちが、ぞろぞろと移動を開始した。


 流星学園の生徒たちも、悔しそうな顔をしながらも、手出しをせず見送っている。


 呼吸ひとつするのもためらわれるようなビリビリとした緊張感が、ここまで漂ってくる。


 いったいどのくらいの時間が経ったのだろう。

 最後の一人の姿が完全に見えなくなると、それまでの緊迫した空気がふっと和らいだような気がした。