『えーっと……さちー、どこにいる?』
左手を庇のように額に当て、キョロキョロと体育館の中をしばらく見回していたお兄様と、バチッと目が合った。
『おお、いたいた。実は、俺のカワイイカワイイ妹の彩智が昨日めでたくこの学園に入学してね。ま、当然みんなもう知ってると思うけど。 ……え、知らない? だったら今知って。完璧に頭にインプットしといて。歴史の年号忘れてもいーから、これだけは絶対覚えといて』
「だから、その新しい校則っての、早く言えよー」
大きな声でヤジが飛び、お兄様がそれを制するように片手を上げる。
『そうそう、新しい校則な。大事なことだけど一回しか言わないから、よーく聞いとけよ。俺の大切な大っ切な妹に指一本でも触れたヤツ、どーなっても命の保証はしないから。はい、覚えたね? 彩智に触んな。わかったな? あ、俺今二回言った? ま、大事なことだからやっぱ二回くらいは言っとかないとな。そんじゃ、一学期もよろしく! はい、解散ー!』
一瞬、会場内が水を打ったようにしんと静まり返る。
「おいおいおいおい、こんだけのために俺ら集めたのかよ。もっと楽しませろよなー」
三年生の列の方から煽るような声が聞こえてくる。
「誰か、その大っ切な妹の前で、兄貴ボコしちゃえよ」
「おっ、それいい。やれやれーっ!」
蜂の巣を突いたような騒ぎになった体育館をステージ上から見下ろしていたお兄様の空気が、さっと一変する。
『……あのさあ。聞こえなかった? 俺、解散って言ったんだけど?』
左手を庇のように額に当て、キョロキョロと体育館の中をしばらく見回していたお兄様と、バチッと目が合った。
『おお、いたいた。実は、俺のカワイイカワイイ妹の彩智が昨日めでたくこの学園に入学してね。ま、当然みんなもう知ってると思うけど。 ……え、知らない? だったら今知って。完璧に頭にインプットしといて。歴史の年号忘れてもいーから、これだけは絶対覚えといて』
「だから、その新しい校則っての、早く言えよー」
大きな声でヤジが飛び、お兄様がそれを制するように片手を上げる。
『そうそう、新しい校則な。大事なことだけど一回しか言わないから、よーく聞いとけよ。俺の大切な大っ切な妹に指一本でも触れたヤツ、どーなっても命の保証はしないから。はい、覚えたね? 彩智に触んな。わかったな? あ、俺今二回言った? ま、大事なことだからやっぱ二回くらいは言っとかないとな。そんじゃ、一学期もよろしく! はい、解散ー!』
一瞬、会場内が水を打ったようにしんと静まり返る。
「おいおいおいおい、こんだけのために俺ら集めたのかよ。もっと楽しませろよなー」
三年生の列の方から煽るような声が聞こえてくる。
「誰か、その大っ切な妹の前で、兄貴ボコしちゃえよ」
「おっ、それいい。やれやれーっ!」
蜂の巣を突いたような騒ぎになった体育館をステージ上から見下ろしていたお兄様の空気が、さっと一変する。
『……あのさあ。聞こえなかった? 俺、解散って言ったんだけど?』



