学園最強の兄は妹を溺愛する

「みなさん、本番ですばらしい演舞を披露できるように、練習がんばりましょうね!」


「はぁ……やっぱカワイイよなぁ、彩智ちゃん。俺、本気でいってみようか——ウソです、ごめんなさい」

 蒼真さんにギロリと睨まれ、津島さんが途中で言葉を飲み込んだ。


「おまえバカか。御門さんの妹だぞ。命いくつあったって足りねえわ」

「オレはどっちかっていうと莉乃ちゃんの方かなあ。あの色気、たまんねえ」

「——なんか言ったか?」

 いつの間にか木野さんのすぐうしろにやってきていた金沢さんが、木野さんの喉元に和太鼓のバチを当て、ぐいっとうしろに引く。


「ぐ、ぐるじい……」


「おい、やめろって!」

「ジョーダンだってば、金沢」

 慌てて二人がかりで金沢さんを止めに入る。


「ちょっと、なにやってんのよ、悠! さっちーがまた怖がったらどうするつもり!?」

 莉乃さんが、両腕を胸の前で組んで、怒った顔をする。


「……すまん、御門」

「いえ、大丈夫です! お気になさらないでください」

 莉乃さんに怒られ、しゅんとした顔でわたしに謝罪する金沢さんに、パタパタと両手を左右に振って見せる。


 だって、先ほどの金沢さんの行動は、どう考えても莉乃さんを想っての行動だったのだから。


 ふふっ。やっぱりお二人はそういうことなんですね。

 お二人には、ぜひとも幸せになってほしいです。