学園最強の兄は妹を溺愛する

「え、チア!? はいはーい! あたしもやりたーい!!」


 手を挙げはしゃぐ莉乃さんを見て、金沢さんがなんとも言えない微妙な表情を浮かべている。


「彩智にチアなんか1000%やらせるわけないでしょ。……学ラン。百歩譲って、学ランならいいよ」

「本当ですか!?」


 お兄様と同じ学ランを着て、同じグラウンドに立てるなんて夢みたい。


「莉乃さんもやりますよね!? 学ランですよ、学ラン!」

「学ランかぁ。……うん、でもそれもアリかも。うふふっ、なんだか楽しくなってきたぁ」

 莉乃さんが、カバンを置いて、駆け寄ってくる。


「ほらほら、二人はとりあえず練習前に体操服に着替えておいで。そのままじゃあ、ハイエナどもの餌食になりかねない」

「?」

 わたしがキョトンとしていると、莉乃さんがわたしの耳元で「このままだとパンツ見えちゃうでしょ」と囁く。

「そ、そうですよね! 失礼しました! すぐ着替えてきますね」



 着替えて戻ると、お兄様と蒼真さんは、タブレット片手に七人バージョンの新しいフォーメーションの打ち合わせをしていた。


「ま、こんなとこか」

「少しでも人数が多い方が見栄えもするし、いいんじゃないか」

「だな。そんじゃ、彩智たちも戻ってきたし、練習はじめるか」


「……ま、ここまで来たら、やるしかねえかあ」

「いつまでも文句言ってたって、しょうがねえしなあ」

「っしゃあ!」

 三人も、気合いの声とともに立ち上がる。


 よかった。さっきまでよりは、やる気を出してくれたみたいで。