「すみません、お兄様。お待たせしてしまって」


 放課後、帰り支度を済ませ校門のところまで行くと、お兄様と蒼真さんが立ち話をしていた。


「ああ、彩智。大丈夫だよ。ちょっと蒼真と打ち合わせをしていたからね」

「そうだったのですね」

「ちょうど今終わったところだ。俺はこのまま帰らせてもらう」

「あのっ。実はお二人にお聞きしたいことがありまして」

 わたしがそう言うと、校門に向かって歩き出そうとしていた蒼真さんが足を止め、わたしの方を振り向いた。


「今日、莉乃さんに伺ったのですが、流星学園には体育祭がないというのは、本当ですか?」

「うん、そうだよ。誰もやりたがらない学校行事を無理やりやろうとしても、うまくいかないのは目に見えてるからね。なら、なくせばいっかと思って、去年からなくしたんだ」

「実際、体育祭の中止に反対する声は、ひとつも上がらなかったな」

「そう……なのですね」


 やはり、本当のことだったのですね。


 落胆し、思わず小さなため息が出てしまう。


「え、彩智、ひょっとして体育祭、楽しみにしてたの?」

「はい……お兄様たちのご活躍が見られると思って、実はとっても楽しみにしていたのですが……。でも、お兄様たちがなくした方がみなさんのためだと思われたのでしたら、仕方な——」

「よしっ、今年は体育祭やるぞ、蒼真!」