「この人、超カッコよくない? ほらっ、あの有名なヤンキー高校の一年生らしいんだけどさ。めっちゃ強いんだって! 入学してすぐに、三年のトップをあっという間に引きずり下ろしたらしいの。ほんと、すごいよね~。あたし、この学校受けようと思ってるんだけど、共学なのに女子がほとんどいないんだって。ってことは、あたしにだってお近づきになるチャンスがあるってことじゃない⁉」

 莉乃がスマホを再び自分の方へと向けると、うっとりとした顔で見つめる。


「って考えるとさ、やっぱ金沢みたいなのは二番以降なんだよねー」

「顔は断トツキレイなんだけど。それ以外の特徴が特にないっていうか」

「昔から思ってるんだけど、悠の隣に並ぶのって、超コンプレックスなんだよねー」

 莉乃が小さくため息を吐く。

「ほんとそれ! やっぱ金沢くんは目の保養くらいの距離感が一番」


 自分たちしかいないと思って好き放題言いやがって。


 怒りが沸くのと同時に、ショックを受ける自分に気付いて、それがまたなんだかショックだった。


 わかってるよ、そんなこと。

 自分が一番よくわかってる。


 小四のときに入った野球チームは、なんとなく肌に合わず一年と持たずに辞めた。

「ほんっと悠ってば気が利かないんだからー」なんて言われながらも、俺ソックリな三人の姉貴たちにはずっとパシリにされ。

 ギャップなんてもんもないし……ケンカだって特別強いわけじゃない。