『えー。あーあー。マイクテスト、マイクテスト。——ねえ蒼真、これ、ちゃんと入ってる?』
ステージ上でマイクを持って立つ人物——わたしのお兄様が、上手のステージ袖の方を見る。
「入ってる。全部丸聞こえだ」
小さなため息とともに、ステージの隅に控えるようにして立つ蒼真さんの呆れたような声が返ってくる。
相原蒼真さんは、お兄様と同じ高校二年生で、お兄様に次ぐ実力者——つまりこの学園のナンバー2と言われている方だ。
『おっけー、おっけー。あー、生徒会長の御門陽介だ。新入生の諸君、入学おめでとう。それにしても、こんな学園に集まるもの好きなヤツらが、今年もこんなにいるとはな。ま、みんなそれぞれ楽しく過ごしてくれよな!』
家ではいつも穏やかなお兄様が、なんだかとても楽しそうにマイクに向かってしゃべっている。
長めの赤茶色の髪に、しゅっとした切れ長の目、すっと尖った顎のライン。
はぁ~、お兄様。今日もステキ。
遠目に見ても整った顔立ちは際立っていて、思わずうっとりと見つめてしまう。
パリッとしたスーツを着こなす仕事モードのお兄様もステキだけれど、この着崩した学ラン姿のお兄様も、なんだか新鮮でとってもステキ。



