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「なんだ、またあんたか」

 屋上に出る扉を開けると、金沢さんがわたしの方を振り向き、イヤそうに顔を歪める。


 翌日の昼休み、莉乃さんと一緒にお弁当を食べ終えると、わたしは一人で屋上にやってきた。

 ここに来れば、金沢さんに会えると思って。


 ちなみに先日お兄様が壊した扉は、修理されてすっかり元通りになっていた。


「あのっ、昨日は本当にありがとうございました」

 金沢さんに向かって、深々と頭を下げる。


「別に。……結局俺があんたと兄貴に助けられただけだったからな」

 そう言って、金沢さんが苦い顔をする。


「おケガの方は、その……大丈夫ですか?」

 右の眉尻の辺りと、左側の口元に貼られた絆創膏、それに腕に巻かれた包帯が痛々しい。


「問題ない。掠り傷だけだ。この前の相原さんの一発の方が、よっぽど堪えたよ」

 ははっと自虐的な笑みを浮かべる金沢さん。


「金沢さん、この前、この学園のトップになりたいっておっしゃってましたよね?」

「……あんなヤツらに負けてるようじゃ、トップになれるわけがないって、わざわざ忠告しにきたのかよ。意外といい趣味してんな、あんた」

 金沢さんが、ふんっと鼻で笑う。