学園最強の兄は妹を溺愛する

 蒼真さんも彼らに続いて歩き出そうとして、まだ空き地の中ほどに突っ立ったままのわたしの方を振り向いた。


「彩智、どうした? 行くぞ」

「……蒼真さん、あのっ」

 意を決して言葉を発すると、蒼真さんが小さく首をかしげる。


「蒼真さんは……お兄様に言われたから、ここに来たのですよね?」


 なんだ、そんなことかというように、蒼真さんが小さくため息を吐く。


「それ以外になにがある?」

「いえっ。ちょっとお聞きしたかっただけなので……お気になさらないでください」

 顔をうつむかせると、制服のスカートをきゅっと握り締める。


 わたしを助けに来たわけじゃない。

 お兄様の命令だから。

 わかりきっていたことなのに、どうして聞いてしまったんだろう……。


「彩智の居場所は、アイツにしかわからないからな。……彩智が無事で……間に合って、本当によかった」


 え……?


 パッとわたしが顔を上げると、蒼真さんがすっと目を逸らした。


 お兄様にわたしの居場所を聞いて……それで、心配して飛んできてくれたのですか?


「ほら、早く行くぞ。あんまり遅れると、アイツが心配する」

「……はいっ!」


 たたっと小走りで蒼真さんの隣に並ぶと、わたしの歩調に合わせるようにして蒼真さんも歩き出した。


 必死に普通の顔を保とうとしても、どうしても顔がニヤけそうになる。

 チラッと隣を歩く蒼真さんの横顔を見上げると、蒼真さんは口をきゅっと引き結んで、じっと前を見つめていた。