学園最強の兄は妹を溺愛する

「蒼真さん。今日は本当にありがとうございました」


 水族館をたっぷり満喫したあと館外に出ると、太陽はすでに半分沈みかけていた。


「……まだ時間があるのなら、乗っていくか?」

「へ⁉」

「さっきから、チラチラ見ているようだったが」

 そう言いながら、蒼真さんが水族館の隣の遊園地にある大観覧車を仰ぎ見る。


 蒼真さんと一緒に乗れたらきっと楽しいのに……なんて妄想していたせいか、知らないうちに観覧車の方を見てしまっていたみたい。

 それにまさか気付かれていたなんて。


「もし、蒼真さんがよろしければ。……ぜひ」



 向かいあって乗り込んだ大観覧車のゴンドラが、ゆっくりと高く高く上っていく。

 西の空はキレイな茜色に染まり、東の空はすでに群青色に沈んでいる。


「キレイですね」

 窓の外を見つめたまま、つぶやくように言う。


 蒼真さんとともに過ごす時間は、とても静かで、心が落ち着く。

 いつまでもこの時間が続けばいいのに……。


 いくらそう願っても、終わりのときは刻一刻と迫っている。


「……蒼真さん、あのっ」

 意を決して目の前に座る蒼真さんの方へと視線を向けると、蒼真さんの黒曜石のような瞳がわたしの視線を真正面から受け止める。


「なんだ?」

「あの……先ほどのことなんですけど」


 蒼真さんが、少しだけ首をかしげ、「ああ」と応じる。


「アイツらのことか。聞きたいことがあれば、話してもいい。なにが聞きたい?」

「いえっ。あの方たちのことは別に……」