学園最強の兄は妹を溺愛する

「ありがとうございます。だいぶ楽になりました」

「少しベンチで休もう。立てそうか?」

 わたしが小さくうなずくと、蒼真さんはわたしの腕を支え、立ち上がる手助けをしてくれた。


 三十分ほど二人並んでベンチに座り、休憩したあと。

「顔色もだいぶ良くなったみたいだな。……今日はこのまま帰るか。アイツになにを言われるかわからんが、彩智の体のためにはその方がいい」

「ま、待ってください! 水族館……行きたいです」

 太ももの上に置いた手で、きゅっとスカートを握り締める。

「ダメ……ですか?」

 蒼真さんの顔を必死に見上げると、なんだか困ったような表情をしていた。


 今日のデートの約束自体、お兄様に無理やり取り付けられたものだったのだから、これ以上蒼真さんを困らせるべきじゃない。

 このまま体調不良を理由に帰るのが、蒼真さんのためなんだ。


 そう思うのと同時に、まだ帰りたくないっていうワガママな自分が、どうしても抑えきれない。


 どうして蒼真さんに触られても平気なのか、その理由をちゃんと知りたい。


 ……ううん、そんなのは言い訳だ。


 わたし、まだ蒼真さんと一緒にいたい。


 小さくため息を吐くと、蒼真さんが口を開いた。

「また具合が悪くなるようなら、必ず早めに言うと約束してくれ」


 それって……一緒に水族館に行ってくれるってことですよね?


「はいっ、わかりました!」