学園最強の兄は妹を溺愛する

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 ここで待っているようにと、お兄様に言われたのですが……。


 五月の大型連休初日の午後一時、わたしは港にある大きな水族館へと続く階段前にやって来た。

 周囲は、家族連れやカップルばかりで、みんな楽しそうにおしゃべりしながら階段を上っていく。


 この前は、わたしが蒼真さんと二人きりで屋上にいただけで、あんなに怒っていたのに。

 急に蒼真さんと『デートでもしてみないか?』だなんて、お兄様がいったいなにを考えているのか、全然わからない。


 それに……蒼真さんは、本当に来てくださるのでしょうか。

 わたしなんかと急にデートしろだなんてお兄様に言われて、きっと迷惑に思っているに違いないわ。


 ……けど、お兄様の『命令』は『絶対』だから。


 ズキッと胸が痛む。


 わたしがちゃんと拒否すべきだったのかもしれない。

 蒼真さんに、ご迷惑をお掛けする前に。


 ……わたしだけが楽しみにしているデートなんて、なんの意味もないのだから。


 そんなことを考えていたら、なんだかずぅーんと気持ちが落ち込んでいった。


 そのとき——。


「ふわぁっ!」

 急に強い海風が吹きつけ、わたしはぎゅっと目を閉じ、背中まで伸ばした長い髪とロングスカートを慌てて押さえた。


 バタバタバタバタ……。


 スカートが風に煽られる音が聞こえるほどの強風に思わず一歩よろけると、「うおっ!」と驚くような声がすぐそばでした。