学園最強の兄は妹を溺愛する

 小さくため息を吐くと、お兄様が軽く手を挙げた。

 すぐにお兄様の近くまでやってきたお店のスタッフに、「ちょっとこいつの傷の手当てしたいんだけど」と親指を立てて蒼真さんを差しながら言うと、すぐに「かしこまりました」と頭を下げ店の奥へと戻っていった。


「陽介、消毒など必要——」

「俺の妹がしなくちゃダメだって言ってんの。わかった?」

 言い含めるようにしてお兄様が言うと、蒼真さんは不機嫌そうにお兄様から顔をそむけ、無言でイスに腰を下ろした。


「手当てがイヤなら、ケガなんかしなきゃいーのに」

「これは、俺の主義だ。おまえにとやかく言われる筋合いはない」

「はいはい、わかってるって。『これは正当防衛だー』って言いたいんでしょ?」


 お兄様たちの会話の意味がよくわからず、こてんと首をかしげる。


「蒼真は、一発相手に殴られるまで絶対に手ぇ出さないって決めてるんだってさ」

 信じられない、とでも言うように、お兄様が肩をすくめて首を左右に振る。

「所用って……ひょっとして、ケンカでもなさったんですか⁉」

「みんな俺に勝てないからって、今度は蒼真が標的にされてんの。ま、結局こいつにも誰も勝てないんだけどね」


 お店の方が持ってきてくれた消毒セットを、お兄様が「ほいっ」と蒼真さんの目の前に置く。