学園最強の兄は妹を溺愛する

「ふわぁ~、すごい景色ですねぇ~」


 51階からの眺望は遮るものがなにもなく、抜けるような青空が視界いっぱいに広がり、なんだか空を飛んでいるみたい。


「気に入った、彩智?」


 窓の外を眺めていたわたしは、お兄様の声に、視線を店内に戻す。


「はいっ。お店の雰囲気も、とってもステキです」


 ダークブラウンを基調とした落ち着いた内装にマッチしたアンティーク調のテーブルとイス。それに、高い天井には豪華なシャンデリア。

 お誕生日ケーキはお兄様が家に持ち帰ってくださったから、お店に実際に来たのは、わたしも今日がはじめてなの。


「すまない。遅くなった」

 店の入り口の方から声がして、声の方を見ると蒼真さんがゆっくりとこちらに向かって歩いてきていた。


「おつ、蒼真」

 お兄様が、蒼真さんに向かってヒラヒラと手を振る。


 蒼真さんのお顔がよく見えるようになると、さーっと血の気が引いていった。


「ど、どうなさったんです、その傷⁉」

「大したことない。かすり傷だ」

 そう言いながら、蒼真さんが血の滲んだ口元を手の甲でぐいっと拭う。

「ばい菌が入ったらどうするんですか! ちゃんと消毒しないと」


 慌てて立ち上がったものの、ここはお兄様のお店の中。

 消毒液なんて持ち合わせているわけもなく、途方に暮れてしまう。