学園最強の兄は妹を溺愛する

「なにをしている。さっさと入れ。ここは俺の店だから、なにも心配する必要はない」

 立ち止まってこちらを振り向いたお兄様が、イラついた口調で言う。

「いやいや、俺の店って……陽介先輩って、いったい何者?」


 高校生になってから、お兄様はいくつかのお店の経営を任されるようになったらしいの。

 そのひとつが、このホテルのティーラウンジ。


 お兄様が担当するまでは、いまひとつお店自体に売りがなく、リピーターもなかなか見込めず、経営状況もいまひとつだったみたい。

 そんな中、去年お兄様がこのお店を担当することが決まってすぐ、店内を全面改装し、海外で受賞歴のある有名なパティシエを雇い、毎月新作スイーツを発表するなど、試行錯誤を続けた。

 その結果、やっと経営が軌道に乗りはじめ、なんとか収支赤字を脱出したところなのだとか。


 スイーツ自体はとてもおいしいのだから、もっとお客様がいらしてもいいと思うのだけど、それだけではうまくいかないだなんて、ビジネスって、本当に難しいものなのね。


「ねえ、やっぱここって高いよね? あたし、そんなにお金持ってないんだけど」

 莉乃さんが、わたしの耳元で囁く。


「今日は、『彩智の友人』の歓迎会だ。主役から金を取るわけがないだろう」

「そうですよね! ほら莉乃さん、早く行きましょ」


 立ち止まったままの莉乃さんの腕を引き、わたしはお兄様のあとについて店内に足を踏み入れた。