学園最強の兄は妹を溺愛する

 一旦話が途切れ、部屋に静寂が訪れたところで、「そろそろ寝るか」と声を掛けようとしたとき、「あのっ」と彩智が先ほどまでより緊張したような声を上げる。


「蒼真さんは……大学生活の方は、いかがですか? やはり、勉強は大変なのでしょうか?」

「そうだな。大変といえば大変だが、高校までの勉強とは全然違って、自分の興味のあることを学ばせてもらっているという点では、とても楽しいと思っている」

「そう、なんですね。……実はわたし、これからのことをいろいろ考えていて。……わ、わたしも、蒼真さんたちみたいに、留学……したいなって。あ、わたしは高校を卒業してからって考えていて。あのっ、でもまだ誰にも言ってなくて……えっと、お父様にも、お兄様にもまだ相談していないんですけど。だから、蒼真さんに言うのがはじめてで……あの……蒼真さんは、どう思いますか?」

 おそるおそる尋ねる彩智の声に、俺は体を起こし、彩智の方を見た。


 彩智とバチッと目が合う。


 俺に、最初に相談してくれたのか?


「……いいと思う。彩智のしたいと思った方向に進むのが正解だと、俺は思う。そのためなら、協力は惜しまない」


 できるだけ早く帰国したいとずっと思っていたが、彩智がアメリカにいる間は、こちらにいるべきだろう。