さっき、俺は彩智になにをした?


 彩智に背を向けベッドに横たわり、先ほどのことを思い返す。


 キス……したのか? 俺が?

 だけど、思わずせずにはいられなかった。

 まさか、彩智も俺と同じ気持ちでいてくれたなんて、思ってもみなかったから。


 ……自分の衝動が抑えきれなかった。


 あんなふうに勢いでするつもりはなかったのに。

 だけど、彩智を安心させることができたのなら……ああ、ダメだ。もうこれ以上考えるな。

 彩智は自分のことをおかしいと言っていたが、俺の方がよっぽどおかしなことばかり考えている自信がある。


 ああ、クソッ。体は疲れているはずなのに、全然眠れる気がしない。


「蒼真さん。……まだ起きてますか?」

 隣から、彩智の声がする。


「ああ。起きてるよ」

「飛行機でたくさん寝てしまったので、寝られなくて。それで、その……もしよかったら、少しだけおしゃべりしてもいいですか?」

「もちろん。かまわない」

「よかったぁ。ありがとうございます」

 彩智の少しはしゃいだような声が聞こえる。


 学校行事のこと、クラスメイトの三浦と金沢のこと——彩智のとりとめのない話が続く。