学園最強の兄は妹を溺愛する

 二人で順番にシャワーを使い、早々にベッドに入る。


 こんなに近くにいるのに、触れることもできないなんて……。


 切なくて、胸が締め付けられるように苦しい。


 高校に入学したばかりの頃は、体質のこともあって、男性に触れるだなんて、考えたこともなかったのに。

 お別れのときは額だったけれど、ひょっとして次に会ったときには……なんて考えていたのは、わたしだけだったのかもしれない。


 こんな思いをするくらいなら、来なければよかった。

『二人きりになりたい』と言われたときは、あんなにうれしかったのに。


「う……うぅっ……」

 必死に我慢しても、嗚咽が漏れる。


「……彩智?」

 遠慮がちな蒼真さんの声が聞こえる。


「ご、ごめんなさい。起こしてしまいましたね」

「いや。大丈夫だ」

「ちょっと、外で頭を冷やしてきます」

 ベッドを抜け出すと、パタパタと出口に向かう。


「待て! ここは日本じゃないんだぞ」

 蒼真さんの鋭く制止する声に、びくっとして立ち止まる。


「どうしたんだ、彩智? なにかあるなら、俺に言ってくれ」

 静かな声で蒼真さんが言う。


「……蒼真さんが…………遠いから」

 扉の方を向いたまま、堪えきれなかった涙がぶわっと溢れ出す。


 こんなに近いのに、こんなに遠く感じるなんて……。