「お兄様!」
国際線到着ロビーをキョロキョロと見回していた彩智が、俺の姿を見つけると、大きく手を振ってくれる。
「彩智」
軽く手をあげると、俺は彩智の方へと大股で歩き出した。
あくまでも、平静を装って。
本当なら、今すぐにでも駆け寄って抱きしめたいところだが、蒼真の手前、そんな姿を晒すわけにもいかない。
俺だって、そのくらいの理性は持ち合わせているつもりだ。
「久しぶり。元気だっ……」
笑顔で彩智に声を掛けようとして、俺の視界の端を駆け抜ける彩智に、思わず笑顔が固まる。
「蒼真さん!」
「彩智。よく来たな」
「はい。本当に来ちゃいました」
蒼真の目の前まで駆け寄ると、彩智がはにかんだような笑みを浮かべる。
おい、ちょっと待て。なんで兄である俺じゃなく蒼真なんだ……いや、まあ……そりゃあそうだよな。
こっちに来てから一年以上、一度も日本に帰っていないんだ。
久々の恋人との再会なんだから、当然といえば当然だ。
ガチでクソムカつくが、彩智の幸せのためなら……このくらいの涙を呑むのはわけない。
あくまでも彩智のためであって、蒼真のためじゃないからな。
そこんとこ、勘違いすんじゃねえぞ、コラ。



