そして、はじめて俺の父親だという人と対面した。


 けど、そのとき直感したんだ。

 あのケーキとプレゼントを送ってくれていたのは——僕に愛情を注いでくれていたのは、この人じゃないって。


 そして、その人の娘ともはじめて対面した。

 あの女の人の持っていた写真に写っていた女の子だと、すぐにわかった。


 いなくなる……そっか。もうすぐ死んじゃうってことだったんだ。


 あのときの言葉が、ようやくわかった。


 それと同時に、俺にずっとケーキとプレゼントを贈り続けてくれていたのは、あの女の人——彩智のお母さんだったに違いないと確信した。


 こんなでかい屋敷に引っ越したというのに、俺の母さんが日中この屋敷にいることは、ほとんどない。

 買い物にエステ、友だちとのお茶会。

 子どもの世話は使用人に任せきりだし、夫婦仲がいいようにも見えなかったけれど、父さんも母さんも、お互い自分のほしいものを手に入れることができて、満足しているようだった。


 その後、屋敷で暮らすうちに聞こえてきた使用人たちの断片的な会話を長い時間かけてつなぎ合わせることで、自分の境遇を大体把握した。