学園最強の兄は妹を溺愛する

「さっきのクッキーも、この子と一緒に作ったの?」

「ええ、そうよ」

 愛おしそうに写真を見つめながら女の人がうなずく。


「それでね、おばさんがいなくなったあと、陽介くんにこの子のことを守ってほしいの」

「守る……?」

「そう。それから、この子がやりたいと思うことがあれば、この子に力を貸してあげてほしいの」

「そんなこと言われても、僕、この子に会ったことないし」

「大丈夫。そのうちきっと会えるから」


「……おばさん、いなくなっちゃうの?」

「うん。……そうね。たぶん、もうすぐ」

 おばさんは少しだけ寂しそうに笑った。


「僕、その子と仲よくなれるかなあ」

「ええ。きっとなれるわ」

「……」


 正直守ってほしいと言われても、どうして俺がそんなことをしなくちゃいけないのかわからなくて、うまく返事はできなかった。


 それからしばらくして、深夜に一本の電話が入った。


「——ええ。わかりました。お辛いでしょうが、気を確かに持って」


 深刻そうな顔で話していた母さんが、電話を切るなり、満面の笑みでこう言ったんだ。

「陽介。もうすぐ大きなおうちにお引っ越しするわよ」って。


 母さんの言葉通り、それからしばらくして、俺と母さんは御門家の屋敷に引っ越すことになった。

 御門家の跡取りとして。