「え、はあ⁉ おい、蒼真! なに考えてんだ。ふざけんな、おまえ。戻ってこ~~~~い!!!!」


 お兄様の叫び声がゲートの向こう側から聞こえてきたけれど、蒼真さんはお構いなしに一直線にわたしの方へと戻ってくる。


「蒼真さん。は、早く行かないと……」


 わたしの目の前まで戻ってきた蒼真さんが、わたしのことを切なげな表情でじっと見つめてくる。


「彩智。少しだけでいい。……抱きしめてもいいか?」


 その言葉を聞き終える前に、わたしは蒼真さんの胸に頬をうずめ、両手を蒼真さんの大きな背中に回した。


『寂しい』

『行かないで』

『ずっとそばにいて』


 そんな言葉たちを、必死の思いで飲み込む。


 蒼真さんもわたしの背中に手を回すと、そっと優しくわたしを抱きしめてくれた。


「彩智……愛してる」

 耳元で吐息とともに囁く声が聞こえ、うんうんとうなずきながらも涙が次々と零れ落ちる。


 しばらくして、蒼真さんがすっとわたしから体を離すと、額に甘いキスを落とし、今度こそ本当にアメリカへと旅立った。