学園最強の兄は妹を溺愛する

「わたしは、おまえに苦労を背負わせたくはないのだよ、彩智」

　視線をわたしに戻すと、お父様が懇願するように言う。


「それでも。この御門家に生まれたからには、わたしには家を守る義務があります。この時代に、そんな考えは古いと言う方もいるかもしれません。けれど、お母様が守り、そしてお父様の守るこの御門家を、わたしにも守らせていただけないでしょうか」


　そしてわたしは、お兄様のことも守りたいの。


　わたしのことをじっと見つめていたお父様が、小さくため息を吐く。


「彩智の意志は、わかった。……では、彩智にも陽介と同等の試験を課す。流星学園を、おまえの手で治めてみなさい。それができれば、わたしの後継者とすると約束しよう」

「本当ですか⁉　ありがとうございます！」

「陽介には、年明けからアメリカの大学で経営の勉強をさせる。流星学園の件は、彩智一人でやるんだ。わかったな？」

　お父様のひと言に、ハッと息を呑む。


「……お兄様も、いなくなるのですか？」

　突然頭をガツンと殴られたような衝撃を受ける。