学園最強の兄は妹を溺愛する

「それは……本当の意味ではわかっていないかもしれません。今はまだ。けどっ。わたしもちゃんと勉強します。だって、誰もお父様のあとを継がないのなら、それこそ今働いてくださっている方たちはどうなってしまうんです?」

「陽介に継がせる。問題ない」

「でも、お兄様は継がないとハッキリおっしゃっていたじゃないですか」

「そんなワガママをいちいち聞いていたらキリがない」

「……お兄様がワガママを言ったことが、今までに一度でもありましたか?」

「っ……」


 お父様の目をじっと見つめて言うと、お父様は苦しげな表情を浮かべ、すっとわたしから目を逸らした。


「お兄様は、今回はじめて自分の意志を口にしたのではないですか? そのことに、お父様も気付いていらっしゃいますよね?」


 この家に来てから、お兄様はお父様に対して一度だって首を横に振ったことはなかった。

 そのお兄様が、ハッキリと継がないと言ったのだ。

 たぶん、ずっと長い間考えて出した答えのはず。

 昨日今日で出した結論じゃない。


 お父様はおもむろにメガネを外すと、天井を仰ぎ見る。


「はぁーー……まさか本当にこんな日が来るとはなあ、彩香(あやか)

 お父様が、天に向かってお母様の名前をつぶやいた。