「まあ、蒼真がどうしてもイヤだったら、そんときは別んとこ行ってもらっても構わないし。それよか、親の敷いたレール外れてみたいってヤツにはピッタリかなーと思ってさ。『高校卒業程度認定試験』ってヤツを突破すれば、俺らでもあっちの大学に入れるんだと」

「ふうん。そうなのか。今まで調べようと思ったこともなかったな」

「アメリカの大学卒業して、ロースクール行って、日本に戻りたくなくなったら、アメリカで弁護士の仕事するでもいいし。ま、俺としちゃあうちのカワイイ妹のために尽くしてもらえれば最高なんだけどな!」

「妹? なぜそこで妹が出てくる」

「勘違いするなよ。嫁にやるとは言ってないからな」


 正直このとき陽介がなにを言いたいのかよくわからなかったが、それから彩智と出会い、アイツの計画も知った。

 俺に子守りをさせるつもりかと、最初は憤りすら感じたが、徐々にそんな未来もアリかもなと、漠然と思うようになった。


 彩智を意識するようになったのは、いつからだっただろう。


 金沢とやり合ったときのケガの手当てをしてくれたときか?

 屋上にやってきた陽介から二人で逃げたときか?

 それとも……過去の俺など気にせず、今の俺を見てくれていると感じたときか?