ぎゅっと目を閉じ、小さく深呼吸すると、もう一度目を開け、きゅっと意識的に口角を上げる。


「大丈夫ですよ、蒼真さん。わたし、ずっと待ってますから。蒼真さんが、帰っていらっしゃるのを」


 わたしが明るくそう言うと、蒼真さんはゆっくりと顔を上げ、至近距離でわたしの顔を覗き込んでくる。

 まるで『本当に?』と不安そうに尋ねる幼い子どものような表情で。


 そんな蒼真さんの頬へと、おそるおそる手を近づけていく。


 ドキドキドキドキ……。

 蒼真さんの頬に指先でそっと触れると、ビリっと体全体が痺れるような感覚に襲われ、パッと手を離す。

 そんなわたしの手の甲にそっと自分の手を添えると、そのまま蒼真さんは自分の頬へとわたしの手のひらを持っていった。


「彩智。俺は、君のことが好きだ」

「わたしも……蒼真さんのことが……好き」


 蒼真さんは苦しげにぎゅっと目を閉じ、深く息を吐くと、すっとわたしの手からご自分の手を離そうとした。

 そんな蒼真さんの手を反射的につかまえ、ぎゅっと握り締めると、わたしは口を開きかけ、そのままもう一度閉じた。