「俺の勘違いでなければ、彩智も俺に好意を持ってくれていると感じていたんだが。彩智は俺のことを、どう思っている? 突然求婚するような人間は、やはり信用できないか?」

「へ⁉ や、でも、あの……」

 蒼真さんらしいストレートな物言いに、頭の中は大パニックを起こし、まともな言葉が出てこない。


「…………すまない。やはり彩智を混乱させてしまうだけだったな。本当は、こんなことを言うつもりはなかったんだが」

 苦しげな表情を浮かべてそう言うと、蒼真さんが自分の額を、とんっとわたしの左肩の上に預けてきた。


 えぇっ⁉ そ、蒼真さん⁇


 蒼真さんの思いもよらぬ行いに、心臓がドックンドックンと飛び出してきそうなほど大きく打ちはじめる。


「不安なんだ……彩智と離れることが。彩智の気持ちが、俺から離れてしまうんじゃないかって……」

 蒼真さんが、絞り出すようにして言う。


 そんなの……わたしの方なのに。

 アメリカに行って、わたしよりもステキな方とたくさんめぐり合って……そうしたら、わたしのことなんて、頭の片隅に追いやられるどころか、蒼真さんの頭の中からキレイさっぱり消えてしまうんじゃないかって……。


 けど……そうよね。

 蒼真さんは、未来に向かって一歩足を踏み出す大きな決断をされたのだから。

 だったら、わたしのすべきことは、蒼真さんを引き留めることじゃない。