学園最強の兄は妹を溺愛する

 蒼真さんのうしろについて階段を上っていき、二人で屋上に出た。


「すみません、蒼真さん。お兄様のことは、わたしにもわからないんです」

 わたしの方を振り向いた蒼真さんに、なにか聞かれる前にと、間髪入れず告げる。


「いや。今日は、陽介の話じゃない」


 お兄様の話……じゃない?

 だったら、わたしにいったいなんの用なんだろう?


「実は、来年の一月からアメリカへ行くことになった」

「……へ?」

 言っている意味がよくわからず、おかしな声が漏れる。


「ご旅行……ですか?」


 それをなぜわたしに?


「違う。向こうへ行けば、最低でも五年……通常ならば七年は戻って来られない」


 それって……。


「留……学?」

「そうだ。向こうの大学に通い、その後ロースクールで学ぶ予定だ」


 ロースクール……たしか、法律を学ぶための学校……でしたよね?


「蒼真さんも、ご両親と同じ弁護士を目指していらっしゃるのですね」

「ああ。すでに日本の司法試験には合格済みだ」

「そうなのです……えぇっ⁉ そ、それって、すごいことなんじゃないですか? 大人の方でも、何年も何年もがんばらないと取れないような難しい資格だって聞いたことがあるのですが」

「……まあ、両親ともに持っている資格だから、そこまですごいと思ったことはないが」

 いつも通り淡々と言いながらも、蒼真さんがなんだか照れた様子で左手の拳で口元を隠している。