お兄様が学校へ行くことも許されないまま、一週間が過ぎた。


 食事も自分の部屋でとらされ、お兄様がダイニングルームに姿を現すこともない。

 つまり、あの創立記念パーティー以降、わたしは一度もお兄様の姿を見ていない。


 お兄様、お元気にしていらっしゃるのかしら……。


 ……そんなはずないわよね。

 きっと、とても落ち込んでいらっしゃるに違いないわ。


「さっちー、大丈夫?」

 お弁当の箸が一向に進まないわたしを見て、莉乃さんが心配そうな顔をする。


「ま、大丈夫なわけないかー。兄貴がなんかやらかして、家から出してもらえないんじゃあねえ」


 詳しい事情は話せないから、学校内ではあることないこと様々なウワサが飛び交っていた。


 犯罪を犯して警察に捕まったとか、他校の生徒にボコられて意識不明の重体で入院中とか、女性を無理やり妊娠させて裁判沙汰になっているとか。


 みんな、お兄様のことをそんなふうに思っていたの?


 じわりと涙が滲む。


 それにしても、お兄様はなぜあんなことを言ったのだろう。

 今までお父様の言いつけ通り、後継者になるためにずーっとがんばってきていたはずなのに、今さら自分は継がないだなんて。


 他にやりたいことでもあるの?


 それに、自分よりも後継者に相応しい人がいるって……。

 いったい誰のこと?